2022年7月26日(火) [ 治療について ]
こんにちは。
小林歯科医院ブログに辿り着いたみなさんは、こだわりの治療に興味津々のモチベーション高い皆さんと推察しています。
最近、患者様から「歯を残したいから根管治療でなんとかならないでしょうか」というお問い合わせをよく頂きます。
また、それと併せて「マイクロスコープを使っていますか?」というお問い合わせも同時にいただきます。
それだけ「マイクロスコープ」というワードが、普及し一般化している証拠でもあるということでしょう。それはとてもよいことだと思います。
一方で歯科医師側を見ると、「マイクロスコープ」さえ買ったら歯を残せると勘違いしている人がいることも事実です。
「天然歯を残す根管治療」という視点に立った時、マイクロスコープがあるだけで「質の良い根管治療が行える」ということではありません。
そして仮に「質の良い根管治療」が行えたとしても、それだけで天然歯を末永く残していけるということでもないのです。
それでは、「天然歯を残す根管治療」で重要な点とはどのようなことなのでしょうか。
根管治療の本質は、根管内の消毒治療です。そうなのにもかかわらず、う蝕(むし歯)という細菌感染部位が残っていては、本末転倒です。
まずはともあれ、う蝕をしっかりと取って、細菌感染部位を確実に除去することが重要になります。う蝕が残ったまま根管治療をすることは、無意味です。
う蝕を確実に除去した時に、残っている歯質が少なくなっていることがよくあります。不足し薄くなった歯質のままで根管治療を行うと、その部分から唾液が侵入してしまい、根管内が唾液に含まれる細菌に再感染してしまいます。
そこで薄くなった歯質を、「隔壁(かくへき)」というもので補います。これは城壁を作って、歯の内部の根管を守るようなイメージです。このように歯の内部への唾液の侵入を防ぎ、感染を制御することが非常に大切となります。
同時に「ラバーダム防湿」を用いれば、完全に近い形で唾液の混入を防ぐことができます。
しかし統計では、根管治療専門医でも確実にラバーダム防湿を行っている医院は、20%に満たないと言われています。しかしながら、この「ラバーダム防湿」は、根管治療の成否にすごく重要な要素を占めていることは、論文でも証明されています。
根管治療とは、根管内の消毒治療です。その消毒が十分にできるように根管の奥へのアクセスの確保、いわゆる「根管の拡大形成」が行われていることが、必要十分条件となります。
解剖学的に、歯髄(神経)が走行している根管の数や形態は、人によってさまざまです。ましてや、1~2cm四方くらいの歯の内部で、肉眼レベルでその歯髄がある位置や走行を正確に確認できるはずもありません。
そこで「マイクロスコープ」が必要となるわけですが、ただ「マイクロスコープ」を使うことだけではなく、見るべきところに確実にフォーカスを当てて治療を加えることができるという、歯科医師自身のセンスや技術・経験値が重要になってきます。
歯髄(神経)があった場所には、当然何かしら補われなくてはなりません。根管充填(こんかんじゅうてん)です。根管充填の方法や手技、材料にも様々なものがあり、目的によって適切なものを使い分ける必要があります。
このことに対する知識や経験値には、歯科医師によって大きな隔たりがあります。
当該処置歯が、どのような噛み合わせの状態で、どの程度の歯質が必要であるかを適切に判断し、それに準じた歯の土台を作ります(支台築造)。その際に、最適な材料と適切な手技で支台築造がなされていることが重要です。
根管治療の成否は根管部分の治療だけにとどまらず、根管の上にどのような歯の修復物を設置するかも、重要な要素であるということです。
残っている歯質の量を踏まえて、適切な形・材料の補綴修復物(ほてつしゅうふくぶつ)を、適切な方法で装着する必要があります。この部分の治療が、予後に大きくかかわってきます。これは、論文上でも示されていることです。
根管治療において、「マイクロスコープ」を使用した、「ラバーダム防湿」をした、ということだけではその治療は完全ではありません。歯の上部の補綴修復も適切に行うことで、はじめて目指す治療が達成できるのです。
そう考えた時に、保険治療内での補綴修復では、それを達成することが難しいということになります。
根管から上部の補綴修復まで、それぞれの治療ステージごとに必要十分な治療が行われて、初めて天然歯を救うことができます。
一足飛びに、「根管治療を保険じゃないのでやった!」と言っても、自動車で例えるなら、乗用車にレーシングカーのエンジンだけを載せたことと変わりません。エンジンだけが凄くよいものになったからといって、車台がそのままではレーシングカーと同じような走りや性能が発揮されないことと同じです。
一方で、ここまでお話しましたが「自分の歯でいられるということに、レーシングカー並みなことを求めていない」という考えも、選択肢の一つですし、不正解というわけでもありません。
それぞれの人の価値観に見合ったゴール、それを達成されることが正解でしょう。すべての人が、レーシングカーに乗っていなければならないということもありませんしね。
そのため、私はいつも患者さんに「自分はどうなりたいですか?」「どういうゴールを迎えたいですか」と聞いています。
それが、マラソンでいう42.195km先のゴールになりますし、僕たち歯科医師や歯科衛生士は、そのお手伝いをさせていただいています。
2021年3月12日(金) [ 治療について ]
こんにちは。
このブログに辿り着いた皆さんは、こだわりの治療に興味があるモチベーションの高い方たちであると思います。
今回は、歯の神経(歯髄)の話をします。
「根管治療」という言葉は、歯の治療にこだわりがある方には耳馴染みがあると思います。しかし「根管治療」とは、歯の神経を除去してしまう、またはすでに神経の無い歯の治療法です。
その前にまずは、歯髄の生死を的確に判断し、神経を残す歯髄温存治療をしてみませんか?
歯根の内部には、神経が走行しているとともに、動静脈によって血管も走行しています。もし、神経を温存的に治療ができるなら、残しておいた方が歯にとって幸福です。それは、血流によって歯に栄養や酸素が運ばれ、歯への修復機転が働くからです。
確かに、神経を除去せざる得なくなった場合には、キチンとした根管治療が大事になってきます。しかし、もし神経や血流が残せそうなら、1度残してみませんか?
当院で神経を残すことに使われる薬剤は、保険診療では使えない特別な薬剤を使用しています。MTAセメント(Mineral Trioxide Aggregate〔ミネラル三酸化物集合体〕)といわれる、特殊な無菌的歯科用セメントを用います。
多少深かったり神経に達するようなむし歯であっても、神経を除去せずに患部にこの特殊なセメントを封入します。
この特殊なセメントの作用により、身体による自然治癒を促すのです。※あまりにむし歯が深い場合には、この治療法は使用できません。
歯髄にむし歯が達している段階で、歯髄を除去して根管治療をするのも、治療の方法として正しい選択肢の一つです。
しかし、もし別の方法により歯髄を残すことができるのであれば、それは歯の寿命を伸ばし、抜歯のリスクを少しでも減らすことができるようになります。
「抜歯しても、インプラントすればいい。」と考える方もいるかと思います。しかし、インプラントはあくまで「人工物」です。よく噛めるようにはなるのかもしれませんが、神経がないため噛んだときの「硬い」「柔らかい」といった感覚はありません。
除去した神経は、元通りになることはありません。神経を除去して残った歯は大事な血流を失っているため、水の通わない樹の状態と等しくなります。
MTAセメントによる治療は保険診療には対応していません。
ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。
2021年2月10日(水) [ 治療について ]
今回は前回の続きです。前回の記事はこちらから
<4>歯科用コーンビームCTにて確実に診断
歯科用のCT(被爆量の少ない)にて、形状や病気の状態など、3次元的に把握をします。
保険の根の治療での2次元の情報より、3次元的情報のほうが、絶対的に治療に有用な情報が得られます。
<5>絶対的消毒完成度の違い
根管内の消毒の具合は、その後の治療成果に大きく左右します。精密根管治療希望の患者様には、特殊な消毒機材を使用し、消毒の完成度を高めます。
残念ながら、保険治療の患者様には使用できません。
<6>根管充填法、根管充填剤の違い
根管内の清潔状態を長く維持させる、再発をできるだけ長期防げるため、特別な材料にて根管内を充填します。保険治療では、使うことができません。
海外の根管治療では普通に使われており、論文ベースでは高い治療効果が報告されています。
<7>グラスファイバーによる、強靭かつ柔軟な土台作製(支台築造)
根管治療を行なった歯は、血流を失います。さらに根管治療を行うために、歯を削らざるえないことで、強度を失いやすくなります。
よって、長く自分の歯を使っていけるように、ガラス繊維を支柱として、引っ張り押し込みには強く、左右の揺すりには柔軟に力を受け止める特殊なグラスファイバー製の土台を作製します。
2021年1月5日(火) [ 治療について ]
こんにちは。
今回も前回に引き続いて、当院の特徴である「根管治療」のお話をします。
根管治療は、歯根の中の神経管を消毒する治療でもあります。
その消毒は、ファイルと呼ばれる針金のような器具を用いて行います。
ファイルは金属製で細長い物のため、金属疲労によって先端が折れてしまい、歯根の中に残ってしまうことがあります。
実はこの「破折ファイル」は、どの歯科医院でも一般的によく起こるメジャーな問題なのです。
金属疲労はあらかじめ予知することは難しいので、折れてしまうこと自体は仕方のないことと言えます。
その残留した破折ファイルを除去するべきかどうかは、歯根の中の
「どの部位で折れてしまったのか」
「どういう折れ方をしたのか」
「それが残存することで症状があるのか」
によって判断することになります。
無理に除去しない方がよい場合もあり、その時はあえて歯の中に残したままで治療を完了させます。
歯根の中に残ったファイルが炎症を起こしていたり、再治療の邪魔になる場合は、取り除くという判断になります。
その場合でも、歯根の中に残留した小さなファイルを除去することは非常に難しく、肉眼で行うことは100%無理でしょう。
ほぼ視認できていないような状態で、強引に除去しようとすれば、逆に歯根を傷つけてしまう可能性が非常に高いです。
マイクロスコープ無しでファイルの除去を行うことは、無謀で暴挙とも言える危険な行為なのです。
今回は、他医院の治療で残留した破折ファイルを、当院がマイクロスコープを用いて除去した例をお見せします。
■ 破折ファイル除去
<前歯>
¥55,000(税込)
<小臼歯>
¥77,000(税込)
<大臼歯>
¥110,000(税込)
2020年12月23日(水) [ 治療について ]
こんにちは。
最近ではメディアや歯科医院のホームページなどで、「根管治療」(歯の神経が通る根っこの部分の治療)について取り上げられることが多くなっています。
歯科治療に興味がありアンテナを張っている患者さんは、根管治療に伴う「マイクロスコープ」や「ラバーダム」というキーワードも知られるようなり、当院でもお問い合わせをよくいただきます。
歯科医院側も、そういった器械・器具・道具を所有していることをアピールするようになってきています。しかしホームページをよく読んでみると、ただそれらを所有しているだけ、とりあえず揃っているだけという医院を多く見かけます。
「とりあえず高い器械を導入したから、これでいい治療ができる」
それは間違った考え方です。
皆さんは、100円均一のショップで「安いけど、これはとても良く考えられた、便利なアイテムだ」という商品に出会ったことはありませんか?(確かに、「安かろう悪かろう」という物もありますが……)
それは歯科の診療器具や材料でも同じことが言え、「高い物が常に一番良い」とは限らないのです。思考停止して、ただ値段だけで判断してはいけません。
自らの治療に何が必要なのかを理解して、使用する器具や材料を見極め選択できること―それがよい歯科医師に必要な資質です。
他の記事を読んでいただければ分かると思うのですが、どのようなトピックにおいても、この考えは通底しています。
今回は、当院の「精密根管治療」の例をお見せします。
上の写真上部が他院での治療、下部が当院での治療です。
精密な根管治療、特殊な充填方法により、根の先端にある病変が治ってきているのが直感的に分かっていただけると思います。
■ 精密根管治療 大臼歯(再根管治療)
<MTAセメントによる根管充填代も含む>
¥132,000(税込)
■ 土台除去(金属/レジン)
¥11,000(税込)
■ 隔壁作製
¥11,000(税込)
根管治療について気になる方は、お気軽に当院までお問い合わせください。