2022年3月23日(水) [ 治療について ]
こんにちは。
小林歯科医院ブログに辿り着いたみなさんは、こだわりの治療に興味津々のモチベーション高い皆さんと推察しています。お近くにある歯科医院は、ほとんどが保険診療に対応しております。今回はそういう歯医者さんのお金の面を見てみましょう。
皆さんもだいたい経験されていると思いますが、歯医者さんでの診療アポイントは、約30分で診療することが一般的だと思います。
1日8時間の診療時間で1人30分の診療アポイントの場合、1つの診療チェアでまかなえるのは、8(時間)÷0.5(時間/人)となり、最大16人を診ることができます。そして、何人もの勤務医の先生・スタッフがいて、複数の診療チェアがあることが一般的な歯医者だと皆さん想像されると思います。
保険点数という収支の枠組みの中で、1人当たり60分以上など時間をかけると、1日1台の診療チェアでは8人しか診ることができず、収支が取れません。そのため、保険診療では30分の予約というのが通常になってしまいます。加えて30分の診療という枠組みの中で歯科用顕微鏡を使うということは、回数ばかり増えるとともに、その都度準備に毎回時間が割かれてしまいます。これは肉眼診療や低倍率診療よりも格段と見えてしまうため、顕微鏡で治療するための準備も含めると診療時間のほとんどが割かれてしまうためです。
保険診療メインで顕微鏡を使用して治療されている歯医者さんは、収支度外視、またはボランティア精神で診療されている歯医者さんだと思われます。
最近ニュースで、医療の診療報酬点数の改定が報道されています。点数の改定で医科の点数は着実に高くなっていますが、歯科ではほとんど横ばいなのが現状です。
そのため歯科の保険医療機関では、これからも、もっともっと人数をさばいて収支を得る傾向になるでしょう。よって1人当たりの診療時間も割けず、キチンとした顕微鏡下で診療を受けるということはほぼ不可能となっているのが実情です。
加えて、昨今では顕微鏡を買って医院に設置するだけで、「顕微鏡を使っての精密な診療ができる」。それを医院の売りにしようとする歯科医院さんが非常に多いです。しかし、あちこち見学に行っても、そんなの使う余裕がなく、医院の片隅にオブジェとなっているところや、置いてあるけど使う環境整備ができていないところが多く、実際メーカーとの販売台数・普及率・使用率は一桁違うぐらい実際の臨床では使われていません。
顕微鏡を使った診療を行うということは、アポイントの取り方やスタッフの配置整備、医院としての診療ポリシー、顕微鏡を使った診療のための道具器材材料が整って初めてできる診療です。もちろん、それに伴う投資も必要になってくることでしょう。顕微鏡を使った診療は、保険診療に頼る診療運営形態のところでは物理的に困難となって然るべきだと思われます。
よって、1人当たり1時間程度のアポイントになってくるでしょうし、そのような費用の設定もご理解いただけたらと思います。
また、世間一般的な知識の浸透として、なんでも白い歯(セラミック)を入れてもらったら、約10万程度かかってしまうというのは、正しい知識ではありません。肉眼で削って作製したものと、顕微鏡下で削って作製したものが全く同一のものであるはずがないし、同じ対価であるのは信じがたいです。
しかしながら、それをどう選択するかは、患者さんご自身の価値観に大きく寄与してくるものとなるでしょう。
2021年9月28日(火) [ 治療について ]
こんにちは。
小林歯科医院ブログに辿り着いたみなさんは、こだわりの治療に興味津々のモチベーション高い皆さんと推察しています。
歯医者で保険のきかない被せ物を勧められたりする経験は、よくあるかと思います。これは根の治療(根管治療)が終わり、被せ物(クラウン)を作製していく、そういう流れのためです。
被せ物(クラウン)を勧められた時「奥歯は見えないから…」「上の歯だから見えないから…」を判断基準にしている患者さんは多いかと思います。
しかし、根の治療の状態が肉眼レベルでの治療で被せ物だけ勧めてくる、しかも自費診療の被せ物を、保険診療と同じ肉眼レベルで削って作製するということは、製作物レベルは保険の肉眼レベルと同じだと思いませんか?
当然、根の先で感染が再発したら、自費の被せ物は全部壊して再作製しないといけません。保険と同じく肉眼で治療された根管治療に、保険と同じく肉眼で削られた自費の被せ物、それでいいのでしょうか?
これを家の建築に例えると、土台の工事を疎かにしたところに、お金かけたお城を建てるものです。そんな新築の家に住みたいと思いますか?本当にそれでいいんですか?
お城のような素晴らしいものを建てるなら、キチンと基礎工事をしたところに建てたほうが良いのではないでしょうか?僕だったら、キチンと基礎工事をしたところに建てて欲しいです。基礎工事をおろそかにしたお城、傾きます。ひと昔前によくあった、欠陥住宅と同じです。
キチンとした建築は、キチンとした基礎工事から。当たり前ですよね。そんな疎かな基礎工事に、僕が削って自費の被せ物を作って根の感染が再発したら、患者さん本人も嫌な思いしますし、僕だってせっかく作ってお金頂戴している被せ物が、すぐ根の病気で壊さなくてはいけなくなるなんて、すごく嫌です。
根の治療成績は根の治療後の被せ物の内容に非常に依存します。顕微鏡レベルで根管治療を行っているのに銀歯の被せ物を入れるのも精密根管治療をやる意味がありません。
意味のある治療、意味のある工事をすることで、素晴らしい治療の結果、すばらしい家が建つことは、同じ意味です。
長く住める家に住みたいですよね?
2021年4月8日(木) [ 治療について ]
こんにちは。
小林歯科医院ブログに辿り着いたみなさんは、こだわりの治療に興味津々のモチベーション高い皆さんと推察しています。
今回は、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)の話をします。
最近では、マイクロスコープが医院にあることを宣伝材料にする医院が増えてきました。所有率でみると、2桁のパーセントにようやく達したと言われています。しかし、マイクロスコープをしっかり使いこないしている医院は、5%にも満たないと言われています。
たしかに視野が拡大されるので、良く見えることでしょう。例えば、ぼんやり見えていた遠くの富士山の風景/景色が、山頂だけはっきり見える、ということになります。
しかしながら、術者は山頂の何が見たいのでしょうか?
単に遠くの富士山の山頂がはっきり見える。それでいいのでしょうか?山頂の観測所を見たいなら、それを視野に収めなければなりません。
結局「何を見たいか」それが無いのに、ただむやみやたらにマイクロスコープで拡大したところで「意味が無い」ということです。
何かが見たい、見つけたいから拡大視野にするのと、ただ漠然とよく見たいのとでは全く意味が違います。漠然と大きく見たいだけなら「じゃあ見えたところでどうしますか?」というきちんとした治療に結びつかないからです。
あなたは、どういう治療を受けたいですか?
・マイクロスコープを使わない、あまり見えていない治療
・マイクロスコープで、単に見えているだけの治療
・マイクロスコープできちんと見つけて、見ている治療
どれを選択しますか?その選択に、あなたの歯の将来が決まってくると、僕は思います。
2021年2月10日(水) [ 治療について ]
「根管治療の案内」を前編と後編に分けてお伝えします。今回は前編です。
当院では、根管治療を重要視しています。
なぜなら、家を建てるに例えるなら、被せ物という住宅を建てるのに、その基礎の部分に当たる土台を疎かにして、見栄えのいい家を建てようとする人はいないからです。
さらに、
保険治療で行われた根管治療
①キチンと見えていない
②根管治療で一番大事なラバーダム防湿もしていない
が、キチンとした被せ物(補綴治療)に見合っていないからです。
近いうちに、基礎工事に当たる根の部分で問題を起こし、お金をかけて治した被せ物を、再度破壊しなくてはならなくなります。
当院の精密根管治療は、保険診療の根管治療と、ここが違います。
<1>歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)下での治療
マイクロスコープとは、脳外科の手術用顕微鏡の、歯科版です。これを使用することで、見えなかったとか、そんな言い訳はあり得ません。ただ、それでなにを見るか、見たいかが重要です。それは、その画像を見てる歯科医師の知識と技量に大きく関係します。
<2>ラバーダム防湿による感染コントロール下での治療
精密根管治療では、必ずラバーダム防湿下にて根管治療を行います。例外はありません。
根管治療では、マイクロスコープを使うことが治療成績を左右するのではありません。ラバーダム防湿にて、唾液の感染をコントロールしているかしていないかで、治療成績が大きく異なります。
海外では、100%行われています。日本では、専門医と言われている人でも、使用率は19%くらいと言われています。保険治療で行っている先生では、ラバーダム防湿を行っているところは、ほぼゼロに等しいです。
マイクロスコープを使って治療していても、ラバーダム防湿をしない治療は、ほぼ無意味です。
<3>患者さんそれぞれ、新品のファイルを用意・使用
精密根管治療患者様には、それぞれその患者様専用のファイルを用意いたします。
当然医療機関ですので、器具の滅菌清掃レベルは十二分です。しかし、使いまわすことによって、切削能力の低下、金属疲労など、トラブルを引き起こす原因となります。
保険治療の患者様で、すべて新品でご用意することは不可能です。
精密根管治療ご希望の患者様には、他の患者さんで使用した器具との混合使用は致しません。
続きは精密根管治療の案内-後編-で。続きはこちらから
2021年1月29日(金) [ 治療について ]
こんにちは。
小林歯科医院ブログに辿り着いた皆さんは、精密歯科治療などの「こだわり」のある治療に興味がある方だと思います。
マイクロスコープを用いた治療を行うにあたっては、治療に関する全てのことに「こだわり」が必要です。「こだわり」がなければ、マイクロスコープ導入したとしても、単に虫メガネとして使っているに過ぎないことになります。
マイクロスコープでは視野が20倍となります。
そこで皆さん、想像してください。
肉眼で見る1cm×1cmの視野は、実寸も1cm×1cmです。
しかしマイクロスコープで見る1cm×1cmの視野は、20倍に拡大して覗いているので、実寸は1/20cm×1/20cmとなります。
1/20cm=0.005mmです。
つまり、1/100mm単位の精密な治療を行うことになるのです。
そしてその精密さに応じた、器具・スタイルが必要になってきます。
視野に応じた精度の高い動きができるよう、専用のドクター用治療イスを用います。
そのイスを用いれば、ヒジを固定点として、細かく指先を動かせるようになります。
またそのヒジの位置も、どんな体形の人もしっかり固定できるよう、ヒジ掛けは円弧を描くように移動し、右左独立して高さを調整できます。
またそれ以外にも、座面の高さ調節はもちろん、マイクロスコープを覗き込む前傾姿勢をサポートできるように、座面が前方に傾くとともに、連動して背もたれが前方に倒れてきます。
普通のイスだとリクライニングのために後方に倒れますが、専用のイスは前方にのみ倒れて、前傾になっている背筋を支え、精密な動きをサポートします。
よって、マイクロスコープを用いた精密な治療を行うのに、事務用ひじ掛け椅子で代用することはできません。それでは治療のクオリティを下げてしまいます。
このように当院では、治療の妥協を許さないために、イス一つにもこだわりを持っています。
マイクロスコープ一つを導入しただけでは、「こだわり」のある診療は完遂できないということです。
全てに「こだわる」ための理由があり、イス一つにもこだわる。
それはこのブログで繰り返しお伝えしている、「長期予防的低介入治療」につながることでもあります。
2021年1月5日(火) [ 治療について ]
こんにちは。
今回も前回に引き続いて、当院の特徴である「根管治療」のお話をします。
根管治療は、歯根の中の神経管を消毒する治療でもあります。
その消毒は、ファイルと呼ばれる針金のような器具を用いて行います。
ファイルは金属製で細長い物のため、金属疲労によって先端が折れてしまい、歯根の中に残ってしまうことがあります。
実はこの「破折ファイル」は、どの歯科医院でも一般的によく起こるメジャーな問題なのです。
金属疲労はあらかじめ予知することは難しいので、折れてしまうこと自体は仕方のないことと言えます。
その残留した破折ファイルを除去するべきかどうかは、歯根の中の
「どの部位で折れてしまったのか」
「どういう折れ方をしたのか」
「それが残存することで症状があるのか」
によって判断することになります。
無理に除去しない方がよい場合もあり、その時はあえて歯の中に残したままで治療を完了させます。
歯根の中に残ったファイルが炎症を起こしていたり、再治療の邪魔になる場合は、取り除くという判断になります。
その場合でも、歯根の中に残留した小さなファイルを除去することは非常に難しく、肉眼で行うことは100%無理でしょう。
ほぼ視認できていないような状態で、強引に除去しようとすれば、逆に歯根を傷つけてしまう可能性が非常に高いです。
マイクロスコープ無しでファイルの除去を行うことは、無謀で暴挙とも言える危険な行為なのです。
今回は、他医院の治療で残留した破折ファイルを、当院がマイクロスコープを用いて除去した例をお見せします。
■ 破折ファイル除去
<前歯>
¥55,000(税込)
<小臼歯>
¥77,000(税込)
<大臼歯>
¥110,000(税込)
2020年12月23日(水) [ 治療について ]
こんにちは。
最近ではメディアや歯科医院のホームページなどで、「根管治療」(歯の神経が通る根っこの部分の治療)について取り上げられることが多くなっています。
歯科治療に興味がありアンテナを張っている患者さんは、根管治療に伴う「マイクロスコープ」や「ラバーダム」というキーワードも知られるようなり、当院でもお問い合わせをよくいただきます。
歯科医院側も、そういった器械・器具・道具を所有していることをアピールするようになってきています。しかしホームページをよく読んでみると、ただそれらを所有しているだけ、とりあえず揃っているだけという医院を多く見かけます。
「とりあえず高い器械を導入したから、これでいい治療ができる」
それは間違った考え方です。
皆さんは、100円均一のショップで「安いけど、これはとても良く考えられた、便利なアイテムだ」という商品に出会ったことはありませんか?(確かに、「安かろう悪かろう」という物もありますが……)
それは歯科の診療器具や材料でも同じことが言え、「高い物が常に一番良い」とは限らないのです。思考停止して、ただ値段だけで判断してはいけません。
自らの治療に何が必要なのかを理解して、使用する器具や材料を見極め選択できること―それがよい歯科医師に必要な資質です。
他の記事を読んでいただければ分かると思うのですが、どのようなトピックにおいても、この考えは通底しています。
今回は、当院の「精密根管治療」の例をお見せします。
上の写真上部が他院での治療、下部が当院での治療です。
精密な根管治療、特殊な充填方法により、根の先端にある病変が治ってきているのが直感的に分かっていただけると思います。
■ 精密根管治療 大臼歯(再根管治療)
<MTAセメントによる根管充填代も含む>
¥132,000(税込)
■ 土台除去(金属/レジン)
¥11,000(税込)
■ 隔壁作製
¥11,000(税込)
根管治療について気になる方は、お気軽に当院までお問い合わせください。
2020年12月17日(木) [ 治療について ]
こんにちは。
今こうして当院のブログを読んでいただいているということは、「精密歯科治療」ということに興味を持っていただいているのだと思います。
以前の記事でも説明してきましたが、当院ではマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた精密歯科治療を行っています。
ここでは「顕微鏡があることが凄い」ということではなく、「どれだけ使いこなしているか」ということが重要になります。
せっかくマイクロスコープを導入しても医院の片隅に置かれ、使われることなくホコリをかぶり、オブジェとなってしまっている医院は、実は数多く存在します。
メーカーの販売データを見ると、日本全国でマイクロスコープを導入している歯科医院は10%ほどであると考えられます。
しかしこの中でしっかりと使いこなせている医院は、数%に過ぎないでしょう。
マイクロスコープは視野が大きく拡大され、肉眼では見えないものを見ることができます。
しかし「見える」ということがゴールではありません。その拡大された視野に「うわー、スゴイ!」と驚いているだけであれば、 歯科医師以外の誰が見ても同じでしょう。
目的は、単純に「大きく拡大して見る」ということで
はなく、「何が見たいか」「それを見るためにどのくらいの倍率が必要であるか」ということなのです。それぞれの治療によって、必要な倍率は異なります。
そして「じゃあ見えたから、どうする?」ということに問題は移っていきます。
ではここで、歯を削るための器械の話をさせていただきます。
当院では、歯を削るために「タービン」は一切使用しません。
タービンとは、「キュイーン」というあの独特の甲高い音がする、ドリルを回転させるための器械です。
あの音は、空気の圧力で羽根車を高速回転させ、その回転によりドリルを回している音なのです。空気圧で羽根車を回しているため、ドリルの回転力(トルク)は強くありません。
ドリルが歯に触れると、その抵抗の方が羽根車を回す空気の力より強くなり、ドリルの回転数は落ちてしまいます。
また足元のペダルで空気のON/OFFのみを制御しているため、回転のコントロールはできません。
そのような器械で、歯を精密に削ることはできません。
精密な治療を実現するためにマイクロスコープを使っているのに、タービンで削っていては本末転倒ということです。
そこで当院では、電動モーターでドリルを回す「5倍速コントラ」を使用して歯を削ります。
モーターであるため回転のトルクは常に一定であり、電気で制御されているため足元のペダルで回転数のコントロールが可能です。これであれば、精密で正確な歯の切削面を描出することができます。
この話からも分かっていただけると思いますが、マイクロスコープによる治療にこだわるのであれば、その他すべての器具・器械・材料にもこだわらなければ意味を成さないということです。
「マイクロスコープで治療をする」≠「マイクロスコープで精密な治療をする」
ということなのです。
当院では「マイクロスコープによる精密な治療をする」ために、用いる器具・器械・材料には、すべてにおいて意味と理由、こだわりがあります。